市民と科学者の内部被曝問題研究会(略称:内部被曝問題研) Association for Citizens and Scientists Concerned about Internal Radiation Exposures (ACSIR)

内部被曝に重点を置いた放射線被曝の研究を、市民と科学者が協力しておこなうために、市民と科学者の内部被曝問題研究会を組織して活動を行うことを呼びかけます。

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総会 特別決議2

子どもの命を守るために全力を!! 何を成すべきか?

市民と科学者の内部被曝問題研究会第一回総会

 東日本大震災に際して起こった東京電力福島第一原子力発電所事故は深刻な被害をもたらしています。広範な地域が汚染され、多くの人々が被曝していのちとくらしを脅かされています。汚染は長期にわたり100 年規模で減衰を待つしかないものです。1 年が過ぎましたが、今後日本の市民が生き残るために基本的な視点を確保し、大局的な対応を、覚悟を決めて、実施しなければなりません。そのうちの最も重要で緊急の課題が、子どものいのちを守ることです。

 汚染の状況は、通常の「公衆に対する年間限度値1 ミリシーベルト以上の汚染領域」は非常に広範に及び、北は盛岡、南は東京・千葉にまで及んでいます。5 ミリシーベルト以上の地域も福島県から東京にまで及び深刻です。原子炉事故で惨禍が伝えられているチェルノブイリ周辺3カ国では、年間1ミリシーベルト以上の汚染地域は、移住権利区域(移住を申請すれば国が責任を持つ。住んでいても良いが特別の注意が必要)、5ミリシーベルト以上は、移住義務(住んでいてはいけない)という汚染基準を持ち、住民を保護しています。日本の基準はそれに対応する基準としては20ミリシーベルト(事故後突然引き上げられた:居住制限区域計画的避難準備区域等)、50ミリシーベルト(帰還困難区域)であり、人の健康を保つためのものではありません。日本政府は、国際的な経験を学ばず、市民の命を切り捨てていると非難されても当然です。私たちはこの汚染の現状をきちんと見て、健康を守るための必要なことを行わなければなりません。

 チェルノブイリの周辺と比較して、フクシマと同等レベルの汚染があったところでは大変な健康被害が出ています。福島市、郡山市等を含む中通りは、チェルノブイリ西方100 キロから150 キロメートルに展開するルギヌイ地区(ウクライナ)の汚染状況と同程度です。ルギヌイ地区では、子どもの甲状腺の病気・悪性腫瘍の超多発、免疫力の低下、平均寿命の短縮、生まれた赤ちゃんの先天性形成障害、病弱、等々が観測されています。

日本でも、既に深刻な健康被害、あるいは被害の兆候が、子どもたち中心に、大人にもたくさん現れています。福島県内だけでなく、関東圏を含む広範囲な地域から、鼻血、口内炎、抜け毛、充血、生理異常、気管支炎、下痢、咳、倦怠感、皮膚斑点、微熱、食欲不振・・・ が、原発事故以降の健康変化として訴えられています。

福島県の実施した子どもの甲状腺検査では、30%の子供に、しこりあるいは嚢胞が観測されました。ベラルーシでの研究結果からは、子どもの甲状腺にはセシウムが多量に入っています。福島の子どもたちの甲状腺は今もなおセシウムの放射線で撃たれ続けられているのです。

私たちは次のことを実施することが重要と考えます。これらに伴う予算は、政府が市民を守る観点に立ちさえしたならば、完全に工面することができるはずです。市民には、生業のこと、家族が分かれて暮らすことなど、大変な問題がありますが、既に大量な健康被害を出している諸国の経験に学ぶ必要があります。

(1)年間1 ミリシーベルト以上の汚染地の子どもの集団疎開を要求します。おとなも健康保護を最優先して対応する必要があり、5ミリシーベルト以上の汚染地での生活は危険と認識し、集団移住を決意するべきです。
(2)18 歳以下の子供の無料検診・医療保障制度を求めます。おとなに対しても同様な制度を求めます。一般検診では放射能による異常の予兆をチェックすることは難しいので、複数の専門医の意見交換による総合診断が不可欠です。子どもの検診には、最低限次のような検査を実施すべきと考えます。
①甲状腺にしこりや嚢胞のある子供達には、最低半年ごとの超音波検査と甲状腺ホルモン検査。
②ホールボデーカウンタで10 Bq/body 以上の子供には、心電図検査と心筋の損傷を調べるためのクレアチンキナーゼの検査。
③血圧測定の実施。高血圧の子供には、精密検査。
④眼科医による眼圧や白内障の検査、ドップラー効果による眼動脈の圧から脳血管の機能異常の検査。
(3)食糧の汚染基準は、実際に健康を守れる基準とすべきです。幼児用食品のセシウム50 ベクレル/キログラムは絶対に容認できません。1 ベクレル/キログラム程度に変更すべきです。同時に一般市民の100 ベクレル/キログラムはドイツ並みの8ベクレル/キログラムとすべきです。
(4)非(低)汚染地域で食糧大増産を行うべきです。まずは、遊休農地利用と汚染地帯の農家の協力を求めるべきです。同時に高汚染地帯では基本的には生産を停止し、汚染の含まない生産方法を工夫するなどして、汚染フリーの食糧を、日本は自前で確保する必要があります。さらに、農産物、海産物共に、検査しなければ売らない・買わないことを原則とすべきです。これに伴う生活保障、生業の補償は東電と政府が基本的に責任を負うべきです。

2012年4月22日
市民と科学者の内部被曝問題研究会第一回総会

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